活用事例

新型コロナで9割減になった売上が
過去最高まで伸びた理由とは?
ハワイ向けに国産の高級鮮魚の商談を
行った丸甲堺周水産株式会社の事例

丸甲堺周水産株式会社
常務取締役
酒井惇 氏

新型コロナウイルスが世界的に感染拡大したことにより、大きな打撃を受けた会社は少なくありません。魚介類の卸売を営む丸甲堺周(さかしゅう)水産株式会社は、2020年4月に売上が9割減となり、会社存続が危ぶまれるほどでした。しかし、コロナ禍でも海外向けの輸出を試行錯誤して続けた結果、今年の上半期は過去最高の売上を記録したのです。丸甲堺周水産株式会社の常務取締役、酒井惇(さかい・じゅん)氏に、日本産農林水産物・食品の輸出商談等緊急支援事業を活用して渡航したハワイでの商談の話や今後の展望などについて、話を聞きました。

創業130年以上の歴史を携えて始めた鮮魚の輸出業

創業当時の「堺周商店」

─これまで、どのような事業をされてきたのでしょうか?

丸甲堺周水産株式会社は堺周商店が100%出資した子会社です。堺周商店の創業は1889年で、その傘下に4つの会社があります。丸甲堺周水産株式会社は、国内では主に都内高級ホテルへの高級鮮魚の卸し業をしており、4〜5年前からは、主にアメリカなど海外向けに輸出も始めました。

─海外への輸出を始めたきっかけはなんですか?

サンフランシスコの友人から、高級鮮魚の輸出を打診されたことがきっかけです。日本の高級鮮魚自体は、アメリカに1970〜1980年くらいから輸出されていたようですが、クオリティのいいものと悪いものが混在していたそうです。近年、日本食ブームで需要が高まっていることもあって、日本の味を知っていたり、日本で修行したことがあったりする板前さんも増えてきた。そんな中で、「もっと質の高い鮮魚がほしい」と、声がかかりました。

─現地での反応はいかがでしたか?

日本は、魚の扱いが世界で一番丁寧な現場だと言われています。私たちは送るときに店舗ごとに魚の品質をチェックして、それをそのまま飛行機で飛ばして、途中で開けられることなく店舗に届けています。そうすると、限りなくハズレの魚が届く確率が下げられるので、そういったところでも、喜ばれたと思います。アメリカでは、カニ風味のかまぼこやアボカド、白ゴマなどを裏巻きにしたカリフォルニアロールが一般的なので、具材になる脂の多いサーモンやハマチ、マグロなどが人気ですね。
また、昔からあるマグロ・ハマチ・サーモンだけでなく、アメリカのいわゆるロール寿司には登場してこなかった小肌・イワシ・鯖などの魚の需要も増えてきています。

コロナ禍で大打撃でも「できることをやり続ける」

─コロナによる業績への影響は、いかがでしたか?

弊社の国内事業は都内の高級ホテルへの納品業がメインなので、東京などの7都府県に緊急事態宣言が出された2020年4月は売上が9割減となり、会社存続の危機に陥りました。また、海外輸出はアメリカ向けがメインだったので、2020年3〜4月ごろからアメリカの各都市でロックダウンが始まり、輸出の売上も7割減となりました。

─そうした苦境をどのようにして乗り越えたのですか?

数カ月間は雇用調整補助金を始めとする補助金によって何とか凌ぐことができました。同時にこれまで取引の無かった国内の販路を営業開拓すると同時に、海外に復調の兆しが見えたタイミングで、思い切ってハワイの営業強化をし始めました。

海外向け輸出を諦めない

─そんな中、海外向けのアプローチも続けられたんですか?

海外向けには、閉塞感のある国内マーケットと比較して、新型コロナの影響が限定的だったハワイの飲食マーケットの拡充に乗り出しました。ハワイへは、2020年の秋口から親会社の堺周商店の国内顧客であるスーパーマーケットのハワイの店舗に日本の安価な鮮魚を出荷していたため、運ぶ手段を確保できていたことが大きかったですね。

─2021年1月にはハワイへ商談に行かれたんですよね。

「日本産農林水産物・食品の輸出商談等緊急支援事業」に申請して補助金をもらい、ハワイで商談を行いました。2021年に入って日本では再度の緊急事態宣言が出され、若干は回復傾向にあった弊社の売上も対前年比50%以下になってしまったんです。なんとかハワイのマーケットに活路を見出して、売上回復をしたいと考えました。アメリカはPCR検査さえ受ければ隔離が必要なかったので、すぐに営業活動ができる点でも、他の国と比べて商談しやすかったですね。

現地では高級和食店をメインに営業を行なった

─実際にハワイを訪れてみて、成果はありましたか?

ハワイではまだまだ質の高い魚が出回っていないように見受けました。主に高級和食店や寿司店に高級鮮魚をサンプルとして持ち込み、「こんなふうに調理すると喜ばれますよ」と伝えると、板前さんは「なるほど」と、喜んでくれていました。価格についても、すでに流通手段を持っている弊社では割と安く出せたので、「じゃあ使ってみようかな」と、言っていただけることが多かったですね。「こんな時期にわざわざ魚屋さんが来てくれた」と、喜んでくれるお店もありました。

持参したサンプルのウニ

─コロナの感染拡大直後に比べて、業績は戻りましたか?

おかげさまで、ありがたいことにどんどん業績は回復して、2020年3月には対前年比100%になり、今は会社として過去最高の売上になっています。これはハワイのマーケットのおかげで、おそらくハワイに行っていなかったら、ここまでの売上になっていなかったと思います。

届けるだけでなく「おいしく食べる方法」も伝えたい

─今後、海外向けの輸出については、どのように進めていきますか?

ハワイは、ほとんどの高級店がワイキキ周辺にあって、マーケットは小さめです。今はそのうち8割ほどの店舗に魚を卸しているので、下半期は100%にまで仕上げていければと思っています。また、現在ニューヨークのマーケットを立ち上げているところなので、これから2年くらいでしっかり根付かせる予定です。その他、台湾や香港の方にも、日本の鮮魚を届けていきたいと思っています。

─日本の水産物をこれからもっと世界中に届けていきたいと考えていますか?

私は、ただ闇雲に届ければいいとは考えていないんです。日本の高級鮮魚は世界的にも高品質なので、海外に出て行くのは必然だと思いますが、無駄に出て行ってほしくもないと思っているんです。ちゃんとおいしく食べる方法がわかっている板前さんに調理してもらいたいからこそ、解凍の仕方や調理の仕方もできるだけ伝える努力をしていきたいですね。

─やはり、直接会ってしか伝えられないことがあるんでしょうね。

もちろん、毎日お店に来られたらうっとうしいと思いますけれど、できるだけ直接会って、話して、お茶でも飲んで話せたら、一番いいですよね。